闘うことの意味を考えてみた

 4月21日、東京・品川きゅりあん大ホールで、日本IBMを告発する4/21大集会が開かれた。1300人の労働者が集まるということで取材に行ってきた。以下、当日の内容を記事にまとめたものを一部加筆修正してお届けしたい。

 この集会では、JMIU・IBM支部の組合員たちが自らの体験をもとにした構成劇を南部合唱団とともにつくりあげた。構成劇は、現状に苦しむ労働者たち、職場でのやりとりなどリアルに描いていた。特に、団体交渉のシーンではほんものと変わらない白熱ぶり。
出演者は演技のプロではないから(一般の労働者)、セリフに詰まってしまうこともある。すると、会場から「がんばれ! あきらめるな」と激励の声。冷やかしではない。参加した労働者たちも、この劇に感情移入し、自分自身を投影していた。幕間に入る「ハードウェーブ」「闘うわれら」などの労働歌も劇を盛り上げてくれる。
 コンピュータ関連のハードウェア・ソフトウェア・サービスを提供するアメリカ・ニューヨークに本社を置く世界的大企業、日本IBMは、「リストラの毒味役」と社長自らが公言し、92年から年間6000人の労働者を退職に追い込み、必要ない部門は労働者まるごと売却、“成果主義”の徹底で賃上げは105倍もの格差がつけられる、など、激しい労働者いじめを日常的に行っている。
「この2年間、感動することを忘れていた」と話す永井守さん(32歳)。2年前、務めていたDTI社(ディスプレイテクノロジー株式会社・滋賀県野州市)の資産を台湾のメーカーに売却し子会社を清算。408人の子会社従業員は188人が譲渡先に転籍、その他には希望退職を迫った。永井さんは、同僚の森川さんとともに転籍を希望したが、会社は一切無視。協議をもとめた団体交渉の場で一方的に解雇を通知された。
それから2年、「たたかってて辛い面も確かにありますよ。大好きな阪神が優勝しても、WBCで日本が優勝しても、どこか醒めていました」と永井さんはつぶやく。
 それまで「給料もそれなりに貰えていたから、不満はなかった」ので、組合には未加入だった。職場の同僚もみんな入っていなかった。組合に対してのイメージも、「なんか、かたくて暗かった」。毎週配られる「かいな」(組合の機関紙)を読んでも、「自分には関係ないと思っていた」。しかし、会社の状況が悪くなる中で、声をかけてくれたのは組合員だった。入ってみてそれまでのイメージや組合にたいする考え方が変わった。過去の争議や、取り組みを先輩から聞いていく中で、定期昇給や年休が、たたかってかちとられたものだと初めてわかった。

 「組合に入って、いろいろな人とも出会えた」とも。戦争体験者や被爆者の話を聞いたり、平和行進も歩いた。組合に入らなければ知らなかったこと、経験できなかったこと、すべてが永井さんにとって新鮮なものだった。
今回、自らの体験を自ら演じることについて「多くの人に知ってもらいたいという思いの方が強いからやってみよう」と決意した。劇の練習をとおして、2年前のことを思い出したという。
 劇の見せ場、永井さんと森川さんが舞台に立ち、参加者に語りかける。「スポットライトがあの日の夕焼けとダブって見える」という言葉は、セリフとはいえ永井さんらの思いをよく表した象徴的なシーンだった。フィナーレ、1300人の「がんばろう」が会場いっぱいに響き渡った。

 集会に参加したボクの友人は、「就職難の時代を生きている私から見ると、大企業に勤めているということだけで「勝ち組」に見えちゃうよね。でも、決してそうじゃない、むしろ、多くの働く人たちが虐げられているんだって(わかった)。団結することとかさ、腕組んで歌うこととかやっぱり重要だと思う」と話してくれた。