「年越し派遣村」

 二〇〇九年新年一発目の取材は日比谷公園に設置された「年越し派遣村」。心ばかりのカンパとカメラを持って行ってきた。
 午後十三時過ぎ。ちょうど、箱根駅伝のトップ集団が通過する時間帯。家族連れやカップル、各大学ののぼり旗や応援団の旗などで賑わう国道。いわゆる正月の風景がそこにはあった。その沿道を通り過ぎると「派遣村」がある日比谷公園。四百人ほどの入村者たちとその数を上回る支援者やマスコミなどがごった返す。
 「一番ほしいのは金。仕事ができない、家がない、好きな酒がのめない、金があれば…」「こんなに大勢で過ごした正月はない(苦笑)」……。誰にでも来るはずの「正月」が来ない。「こんな悔しく惨めな思いをなぜ私が」という思いが伝わり、ペンを持つ手が止まり、首からさげていたカメラをバックにしまわざるを得なくなる。
 「派遣村」に行くことをためらったと言っていた当事者もいた。しかし、日比谷公園に充満していたのは絶望よりも、生命のしぶとさとあたたかさ。午後17時50分頃、炊き出しを待つ長蛇の列がそれを象徴するかのようだった。