十七年

 一九九〇年に栃木県足利市で女児が誘拐・殺害された「足利事件」で無期懲役の刑に服していた菅家利和さん(六十二歳)が十七年半ぶりに釈放。再審前の釈放は異例で、無罪がほぼ確実となった。
 事件発生当時「最先端の科学捜査」だったDNA鑑定により濡れ衣を着せられ、その後、飛躍的に精度が向上した、同じDNA鑑定によりえん罪を晴らす形(遺留物と菅家さんのDNA型が一致しない)となった菅家さん。「刑務所の中ではつらいこともあったが、きょうまで一生懸命(無罪をもとめて)頑張ってきた」と話し、当時の捜査に話が及ぶと「間違ったではすまない! 刑事、検察官たちは絶対に許せない! 絶対に誤ってほしい」と語気を荒げたという。
 今回の事態は、「科学の目」をもって事実を究明・認定する態度を放棄した結果といわざるをえない。
 菅家さんが逮捕されたのは一九九一年十二月二日。それから今日にいたるまでの約十七年半、菅家さんが送るはずだった平穏な日々の生活は誰が戻してあげられるのだろうか。警察・検察機構は今回の事態を真摯に向き合い、菅家さんの人生を取り戻すために取り組むべきだ。