友人の父

 友人Uの父親が今週火曜日、癌で亡くなり、そのお通夜に参列させていただいた
。まだ60そこそこの故人。2年くらい前から癌を患っていた。
 Uは父親の癌を知るちょっと前くらいから恋人と同棲を始めた。いろいろな事情や理由で結婚に踏み切れずにいたけれど、「父が生きてるうちに」と、今年の秋、結婚式を挙げることまで予定していた。
 しかし、別れは突然にやってきた。
 「きょうがヤマです」、そう言われた今週火曜日。Uは恋人と一緒に父親の病室に行き、両親の目の前で婚姻届を書いた。両親は結婚を了承した。父親が笑顔だったかどうかはわからないけれど、「このタイミングってお前らしいな」と苦笑いしたに違いない。
 お通夜の会場には父親が大好きだった競馬新聞とギター、家族の写真が飾られていた。写真をよく見るとUだけが写ってない。写真好きのUが撮ったものだろうことはすぐにわかったし、Uも含めた写真が一点もないのもU家らしかった。
 ご霊前。ヒゲぐらいそれよって思ったけど、目を赤くしながらも自分の妻と母親を隣に、シャンと座っていたUはかっこよかった。