それは、新宿駅の改札口で起こった。
それは、先日のこと。いつもの帰り道、いつもの時間、しかしあのときは何かが違っていた。謎の淑女が焦った顔で僕に近づいてこう言った
「財布を落としたんです……電車賃を貸してください」
僕は数分迷ったあげく電車賃を貸すことにした
「来週の同じ曜日で、この時間にお金を返しに来ます」
そう言い残して女は去った。僕は「なぜお金を貸したのだろうか」と自分に問うた。久しぶりに自分のことを考えてみた。
そして結論、
何か見返りを期待していたのだろうと思う。
「ここから愛が始まるんじゃないか? そうだとしたら、それはドラマだ。小銭で永遠の愛が始まるのだ」