狛江ぞうれっしゃ合唱団1stコンサート

丹沢の峰 青くかすみ…、アンコールの「水と緑の街」(狛江市歌)の伴奏が始まり、合唱団が歌い出すと、自然と客席からも爽やかな歌声が響く。
“文化・音楽が響き合う街”というスローガンを掲げた市区町村は全国数あれど、これを誠実に希求し、市民と共に実践していく街は、残念ながらそう多くはない。私が狛江市の文化行政や市民発信の文化運動、市民運動を知ってから十年。イベントなどに参加するたびに“羨ましさ”や良い意味での“嫉妬”のような感情を抱く。自分の街や地域でもこんな活動がしたい。自分もこんな街に住みたい、と。
そんな、私にとって“憧れ”“目標”である街ですくすくと育った狛江ぞうれっしゃ合唱団のコンサート。「街と、街のみなさんとともに歌って(育って)きたこと」を大事にされた、ヴァラエティ豊かなプログラム。活動の幅の広さを感じさせる客演陣。初めての単独公演とは思えないステージングに日頃の演奏が見え、あたたかななかにも一本筋の通った合唱を聴かせていただいた。
第一部は団名の由来ともなっている合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた」を、狛江在住のネパールの子どもたち、中学生とともに全曲演奏。伴奏や役者陣が、これまた地元在住で固めていることも、舞台の彩りに一役買っていた。何よりも、合唱団の演奏が、そうした「演出面」や「特別な何か」に負けなかったこと。合唱で「ぞうれっしゃ…」の世界観をつくりあげていたこと。歌い手一人ひとりの「こだわり」と、指揮者の「こだわり」が最後まで貫かれた“ひびき”だった。
その一方で、第二部の男声合唱、女声合唱では物足りなさもあった。声が届ききらず、ことばが伝わらないといった場面がいくつかあった。そうした物足りなさが消えたのは、混声で歌われた「ひとつぶの涙」。昨年の“日本のうたごえ祭典in愛知全国合唱発表会〈一般の部A〉”に出場を決めた曲の一つということ以上に、第一部で感じた歌への「こだわり」が伝わってきた。ことばが鮮明だから、この地上に、未来に何を残し、どんな種を植えるのか。「ぞうれっしゃ…」のように、子どもの夢に大人たちがこたえられる未来をというメッセージがくっきりと届いてくる。アンコールが市歌というのも“らしい”演出だった。
水と緑、文化あふれる街でスクスクと育った合唱団。終演後、すでに次の“晴れ舞台”を期待して帰路についた。