さようならグリーンプラザ新宿

東京・新宿、“もっとも眠らない町”歌舞伎町。そのど真ん中に、労働者や観光客の憩いの場として親しまれている一軒のカプセルホテル&サウナがある。その名は、「グリーンプラザ新宿」。創業三四年ということは僕の“4コ下”ということになる。
僕とグリーンとの出会いが何年前だったかは忘れてしまったけれど、新大久保の職場で働きはじめて何年か経ったころだったと思う。職場関係で知り合ったセンパイに連れられて行ったのが始まり。最初は、サウナで仮眠をとるなんて僕には縁のない話だと思っていたけれど、使ってみると過ごしやすい。
お世辞にも綺麗とは言い難い仮眠室ではあるけれど、都会のど真ん中の施設にしては風呂やサウナの種類が豊富で露天風呂もある。都会の夜空を見上げながら風呂に入っていると、昼間の喧騒が湯気と共に空へとけてゆく。
風呂上がりは、食堂へ。酸っぱいだけが取り得のレモンサワーと冷やしトマトやコロッケをやる。そしてマンガを読みたければ仮眠室となりの漫画ルームへ。至高の時間がそこにあるのだ。
その魅力に一晩でとりつかれてしまった僕は、月二〜三のペースで通いつめた。マッサージの店員さんたちには名前を覚えられていたほど。
そんなグリーンが今年の一二月二五日、三十四年の幕を閉じることになった。
いてもたってもいられなかった僕は、その情報を知ってから週一から週二、ひどいときには週三のペースで通い詰めた。なんだろう、自分の家がなくなってしまう感覚に襲われてしまったのだろうか…。
閉店前日、街がクリスマス一色に包まれた二四日、「浮いた予定」が全くない僕はラストチェックイン。もう、酸っぱいレモンサワーも、力まかせの足つぼマッサージも、大浴場も、露天風呂も楽しめなくなると思うと、残念でならない。
また、グリーンのようなリーズナブルで暮らしやすいサウナを探さなきゃいけないと思うと、面倒くさいなと思う。でも、終わりは何かのはじまり。そう信じて、楽しめるだけ楽しんだ。