はじめてのおつかい

 知人の「海苔巻き用の韓国海苔を買ってきて」との依頼で、初めて大久保通りにある“ソウル市場”に足を踏み入れた。
 店内は平日の昼下がりだというのに大変な人数でごった返す。お目当ての「海苔巻き用」の全形を見つけ、行列に加わり、レジへ。
 「六三〇円です」――カタコトの日本語が聞こえてくるのかと思いきや、ネイティブな発音。名札を探したがみつからない。買い物客としてではなく、ショップ店員で好きなものに接していたいということか。
 もうひとつ意外に思ったのが、並んでいるおばさんたちのマナーのよさ。もっとガッツガツ割り込むのかと思っていた。好きなものには優しくなれるのだろう。
 単なるお使いだったけれど“ブーム”の一端を体感でき、そして、なぜか優しいキモチになった“はじめてのおつかい”だった。