二十周年も“浪花節”

 三日、「猛牛祭 〜天山広吉デビュー20周年記念興行」が東京・後楽園ホールで開催。二千人の観衆が祝福。メインに登場した天山は、ヒロ斎藤蝶野正洋と組み、同期の大谷晋二郎金本浩二西村修と対戦した(三十分一本勝負)。
 途中、宿敵(?)飯塚が乱入してくるなど劣勢を強いられたが、久々爆発のムーンサルトプレスで金本をピンフォール。20周年をしめくくった。
 天山の魅力は何かと聞けば、やはり“自分を貫く浪花節”。
 狼群団、NWOジャパン、TEAM2000、天コジ、GBHとチームを渡り歩くも、「やさしくて力持ち」な心根はかくせない。邪道のコーチングで肉体改造しても地が出て不格好なファイトスタイルになる。ベルトを獲っても長続きしない――。「どうでもいいんちゃうかちゅうヤツ」だからこその魅力なのだ。
 プロレスの魅力は日常生活での嫌なことを忘れて一心不乱に熱狂できることと同時に、レスラーの人生(サイドストーリー)に(ある意味勝手に)共感できることだとおもう。
 「大事な仕事、ポカしたな」「あんなに勉強したのに、志望校に入れなかったな」――こんな悩みをもつ(僕も含めた)ファンは天山に自分を重ねる。三沢や小橋、武藤、蝶野へのファン意識とはちょっと違うのである。
 そして、そのファン意識に近いのが「破壊王」「ミスターIWGP」として、新日マットの一時代を築いた故橋本真也。天山にとって、新弟子時代から愛のある(?)イジメでかわいがられた「思い出の大先輩」なのだ。この橋本も輝かしい栄光だけではなく、泥水をすするような試練がいくつもあった(それの最たるものが小川直也との一連の抗争だが)。団体に翻弄され続けても、不器用でも自分のプロレスを貫いた選手なのだ。
 この試合の前日、橋本の息子橋本大地(ZERO-1)と対戦。大地の「恨みでもあるのかというくらいの強烈な」蹴りを受けるも、「まだまだ、お前のおやじはこんなもんじゃないぞ」と檄を飛ばした。若手時代、先輩たちに叱咤激励されてきたことと同じ事を大地にやったのだ。不器用でも自分を貫けと。
 やはり天山には浪花節が似合うのだ。三十年目指してさらに“こぶし”のきいた浪花節をきかせてほしい。
 (文中敬称略)