一枚のハガキ


 新藤監督が一カット一カットかみしめながら撮ったような作品。ところどころにセルフオマージュなシーンも登場する。これは、戦争を憎み(反戦)、生へとひたはしる(賛生)極上の反戦・賛生映画だ。
 どの場面も印象的だったが、六平直政が日の丸を背に鈴木大介(ギタリスト)のギターのしらべにあわせて「影を慕いて」を切なく歌うところ。鈴木氏が丸坊主になっての兵隊役というのも新鮮で豪華。
 そして、ラストにさしかかるあたり、焼けた家をみて豊川悦司大竹しのぶにプロポーズするシーンだ。これから、新しい人生を踏み出す出発点にふさわしい構図とおもった。
 映画の教科書のようなカット割りやシナリオ、滑稽な人物描写は健在。文句なく五つ星! 最後の作品にふさわしい。